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ガンマ線バースト(GRB)は天文学の分野の中で最も光度の高い物理現象として知られています。この現象は限られた時間に起こるものであり、ガンマ線が数十ミリ秒から数分の間に閃光の様に放出されます。その後、X線や可視光での残光が数日間にわたって見られます。天球上のランダムな位置で発生しており、2度と同じスポットからは発生しません。
ガンマ線バースト探査衛星 Swift は NASAの中規模エクスプローラー(Midium Explorer; MIDEX) ミッショ ンとして1999年に採択され、2004年11月にデルタIIロケットで打ち上げられました。2017年2月6日に Swift のチームリーダー Neil Gehrels 博士が突然の病で 65歳という若さでお亡くなりになり, Gehrels 博士の強力なリーダーシップで推進された Swift であったため、衛星の名前を Neil Gehrels Swift Observatory と変更しました。
打ち上げから20年以上が経過しましたが、衛星を含めすべての観測装置は元気に稼働しています。
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Swift 衛星の最大の特徴は、完全な自立型の衛星である点です。ガンマ線バーストの検出、衛星の姿勢変更、そして視野の狭い望遠鏡による追観測、これらすべてが自動的に行われます。突発的な現象であるガンマ線バーストは時間の経過と共に、その電磁波放射は減光してしまうため、人間の手を介在しないで(人間が操作を行うと必ず観測の遅れが生じます)、すべての観測を自動的に行う必要があります。それを行っているのがこの Swift 衛星です。
Swift 衛星には以下の 3つの観測装置が搭載されています。
ガンマ線バーストの検出、およびその到来方向を決定する、広視野ガンマ線望遠鏡: Burst Alert Telescope (BAT)
X線領域でガンマ線バースト残光観測を行う狭視野X線望遠鏡: X-ray Telescope (XRT)
可視紫外線領域で残光観測を行う狭視野可視紫外線望遠鏡: UV/Optical Telescope (UVOT)
BAT は焦点面に 32768個 (1素子の大きさは4 x 4 x 2 mm^3) の亜鉛テルル化カドミウム (CdZnTe) という半導体検出器を敷き詰めて、その焦点面から約1mの所に2次元符号化マスクをもつ硬X線イメージャーです。ガンマ線の到来方向は2次元符号化マスクで作られるマスクパターンを焦点面の検出器で検出し、そのパターンを解析する事で (ガンマ線の到来方向によってパターンが変わるため)、決める事ができます。位置決定精度は1-3分角です。全天の約 1/6 を一度に監視しています。観測エネルギー帯は 15-150 keV です。NASA のゴダードスペースフライトセンターとロスアラモス国立研究所で開発されました。
BAT は 15-150 keV というエネルギー帯域でのガンマ線天体のイメージ、光度曲線、スペクトルを調べる事ができます。BAT のデータはガンマ線バーストの研究はもちろんの事、既知の天体の時間変動を調べたりや現在の所、最も感度の良い硬X線領域での全天サーベイマップを提供しています。
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左: BAT の概要図、中央: BAT の2次元符号化マスク、右: 128個の CdZnTe 素子
XRT は 0.3-10 keV というエネルギー帯に感度のある X線望遠鏡です。安く、早く作るために、X線望遠鏡は Spectrum X-Gamma 衛星用に開発されたスペアー品を用い、焦点の X線 CCD は XMM-Newton 衛星に搭載されている EPIC カメラ用に開発されたものと同等のものを使用しています。位置決定精度は数秒角 (2-5秒角)、視野は 23.6 x 23.6 分角です。エネルギー分解能は ~140 eV (@6 keV) です。
BAT の精度の高い位置情報と速い衛星の姿勢制御のおかげで XRT は今まで観測が難しかったガンマ線バースト発生後、約 100秒からの X線初期残光の観測に成功しました。XRT は Swift の機動力を利用した、既知の天体のX線でのモニター観測などでも世界中の研究者に利用されています。
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左: XRT のX線望遠鏡、中央: 焦点面の X線 CCD、右: アセンブルされた XRT
UVOT は口径 30cm の紫外線から可視光まで 7色のフィルターで観測できる望遠鏡 (リッチークレチアン式)です。XMM-Newton 衛星の Optical Monitor (OM) をコピーして作られました (XRT 同様、安く、早く作るためです)。マイクロチャンネルプレートと CCD (Micro-channel plate intensified CCD) を用いる事でフォトン1個1個を読み出す事ができます。7色のフィルターの他に、紫外線と可視光帯域のグリズムを 2つ搭載しています。観測帯域としては 170-650 nmです。視野は17分角です。
UVOT はガンマ線バーストの可視光観測はもちろんの事、今まで観測がほとんどなかった紫外線やX線での超新星の観測で大きな成果をあげています。
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左: UVOT の焦点面 (フィルターホイールが手前に見えています)、右: アセンブルされた UVOT
Swift 衛星はガンマ線バーストだけでなく、様々な突発天体の研究において研究者を驚かす観測結果を次々ともたらしています。
高赤方偏移GRBの発見: Swift 衛星と地上望遠鏡との連携により、2025年までに分光観測に成功した赤方偏移6を超える GRB が7個発見されています。このことにより、GRB を遠方での明るい光源として利用した初期宇宙の研究が本格的に始動しました。
ショートGRBの残光発見: Swift により継続時間の短いGRB (通称ショートGRG) の残光が検出されるようになり、ショートGRB の発生場所が高い精度で分かるようになりました。3つの観測装置が自動で観測を行うことで、Swift 以前では考えられなかった精度の位置情報が GRB 発生後、10 分程度の時間で手に入れることができるようになりました。
超新星の観測: Swift の UVOT は地上では観測が困難な紫外線領域での観測を得意とし、地上での調査で発見された多くの超新星を、主に紫外線領域で観測してきました。
マグネターの発見: マグネター(強磁場中性子星)は硬X線(数十keVから数百keV)領域で数ミリ秒から数十ミリ秒の短いバーストを繰り返し起こすものが多くあります。Swift ではこの様なバーストが起こると、最初はショートGRB と同定され、地上へ速報されます。しかし、その天体がショートバーストを繰り返し起こせば、BAT で全く同じ方向からさらなるショートバーストを検出することになります。その結果、その天体がショートGRB ではなく、新たに発見されたマグネターであるという結論になります。Swift J1834.9-0846 はこのように Swift の BAT によって発見されたマグネターです。
潮汐破壊現象の発見: 2011年3月28日に、BAT が全く新種の突発天体を発見しました。最初は通常のガンマ線バーストだと思われたのですが、最初にトリガーしてから10分後にさらに増光したため、同じ天体からトリガーしました。驚く事に最初のトリガーから1日後、そして、2日後にも同じ天体で BAT がトリガーした事から数日間に渡り、非常に明るく硬X線帯域で光っていた事になります。また、XRT でも GRB の X線残光とは異なるX線の光度変化が観測され、XRT による観測は1年にも渡り続けられました。この天体は Swift J164449.3+573451 と名付けられ、多波長による精力的な観測により、この天体の起源として、巨大ブラックホールに星が接近し、その星がばらばらに壊され、吸い込まれていく過程で起こるフレアー現象である、潮汐破壊現象の現場を観測したと考えられています。
重力波と同期した紫外線でのキロノヴァ放射: 2017年8月17日に重力波観測装置により検出された連星中性子星の合体イベント GW170817 の電磁波対応天体の UVOT による観測で、連星中性子星の合体に伴う重元素によるキロノヴァ放射を紫外線帯域で検出しました。急速に減光する紫外線放射の検出により、キロノヴァ放射の物理を理解する上で大きな成果をもたらしました。
Swift衛星についてさらに詳しく知りたい方は NASA Swift ページをご覧下さい。