ARICAは『ガンマ線バーストの速報』を目的として作られた超小型衛星です。CubeSatという名前の通り1辺が10 cmのキューブ(立方体)の形しています。JAXAのプロジェクトである 革新的衛星技術実証2号機の公募に選定され、日本時間 2021年11月9日 9:55:16 に JAXA イプシロンロケット5号機で打ち上げられました。打ち上げは成功し、ARICA 衛星は無事に軌道へ投入されましたが、残念ながら ARICA との衛星を確立する事ができず、2025年に運用を終了しました。
いつどこで起こるかわからないガンマ線バーストはその時刻、位置情報を速報することで追観測できる可能性が広がります。そこでARICAは簡単に手に入る民間の企業が提供する衛星電話用に開発された通信端末を搭載して、その端末がガンマ線バーストの速報システムとして十分に実用可能であるかを実際に宇宙に飛ばして半年間検証します。
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図1 ARICA の CAD イメージ
HETE-2 は 2000年に打ち上げられた、世界初のガンマ線バースト観測衛星です。周回軌道である赤道上に設置された14ヶ所の地上局のうち一番近い局に信号を送信するという、宇宙との通信では一般的な方法で地上とデータ通信を行います。このシステムは主にアンテナ、受信機、コンピュータから成っているので低コストであることが特徴です。しかし、軌道上に複数の地上局を設置し運用し続ける必要があることから、多くの労力が必要であるという問題があります。
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図2 HETE-2 の外観 (左図). 地上局を用いた HETE-2 の速報システム (右図)
TDRSS は NASA が開発したデータ中継衛星を利用したシステムです。ガンマ線バーストを観測した Swift 衛星は、この TDRSS を介して地上とデータを通信します。このシステムでは HETE-2 とは異なり、地上局を複数設置する必要もなく、ガンマ線バーストの速報を地上で受信することが出来ます。しかし、システムを NASA が所有しているため、NASA 以外のミッションでの利用が難しいという問題があります。
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図3 Swift 衛星の外観 (左図). TDRSS を用いた Swift の速報システム (右図)
ARICA は民間衛星通信のネットワークを用いた速報システムの検証を行います。民間通信端末には、イリジウム社のShort Burst Data(SBD)とグローバル社のSTX-3を使用します。
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図4 ARICA で実証する民間衛星通信を利用した速報システム
イリジウム衛星は、高度780kmの軌道上に66基あるデータ中継衛星です。Short Burst Data (SBD) と呼ばれる通信端末を用いることでイリジウム衛星を経由してデータ通信を行うことができます。この通信システムでは、世界各地で端末との通信が可能である他、双方向の通信が可能である点が特徴です。
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図5 イリジウム通信端末 SBD9603 (左図). イリジウムの通信ネットワーク (右図)
グローバル衛星は、高度 1414 kmの軌道上に32基ある地球周回衛星です。STX-3 と呼ばれる通信端末が近くの衛星と通信して、13ヶ所以上の地上局のうち最も近い地上局にデータを下ろすという仕組みになっています。この通信システムは、イリジウム衛星を通じた通信とは異なり単方向の通信にのみ対応しています。
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図6 グローバルスター通信端末 STX-3 (左図). グローバルスターの通信ネットワーク (右図)
2018 年度から開発を開始し、2021年の打ち上げまでの約4年間で開発を完了しました。衛星のサイズは 1U (10 cm角) サイズで、総質量は 1065 g でした。
衛星の一番上にあるボードで、GPS のアンテナ、GPS モジュール、GAGG 結晶と MPPC を利用したガンマ線検出器、MPPCへ印加する高圧モジュールなどが実装されています。
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図7 手前に見えている白色の基板が Front-end ボード (左図). 右は遮光テープを外した状態でのガンマ線検出器.
雷雲ガンマ線検出を目的にシマフジ電機にて開発された GROWTH ボードを ARICA 用に改良しました。この GROWTH ボードは Front-end ボードのガンマ線検出器のデータを処理するだけでなく、衛星全体のシステム制御も、ボード上の FPGA (Artix-7) で行います。
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図8 ARICA 用に改良された GROWTH ボード
イリジウムの通信端末である SBD、そして、グローバルスターの通信端末である Eyestar-S3 が搭載されているボードです。また、このボードは GROWTH ボードと本ボードの下に位置する EPS ボードとを接続するインターフェースの役割も持っています。
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図9 SBD+Eyestar ボード
衛星の 1U 構造体、衛星の電源供給回路である EPS、バッテリー、そして、太陽電池パネルは宇宙利用実績品を AAC Clyde space 社から購入し、そのまま利用しました。
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図10 左: 1U 構造体、中央: EPS と 20Wh バッテリー、右: 太陽電池パネル
衛星の最下面に位置するボードで、ジャイロセンサー、側面パネルに設置される赤外線センサーの接続コネクター、そして、外部からアクセスするための外部コネクターなどが実装されています。
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図11 Backend ボード
側面パネルには、SBD や Eyestar 用のパッチアンテナ、赤外線センサー、そして、衛星の電源を切るための RBF ピンや外部コネクターピンにアクセスするためのアクセス窓があります。
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図12 側面パネルの様子 (写真は下が衛星上面で、上が衛星下面です)
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